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企業が農業法人になるには?

【はじめに】

農業と言えば、昔から田舎の農家さん達が代々と受け継いできて日本の食を支えているイメージが強いかと思います。

しかし、近年になって地方の人口減少が加速して後継者不足に悩む農家さんが増えてきているのが現状です。

さらに、日本はTPP(環太平洋パートナーシップ)に加入した事により海外輸入の関税が緩和され、外国産の農産物が低価格で大量に入ってくるようになりました。

そのため、日本の農家さんはより農業を続けるのが難しくなってきています。





地方では農家を辞める方も年々増えてきており、耕作放棄地となった土地が後を絶ちません。

そこで、最近では放置された農地を企業が買い取り、新たに農業へ参入するという事例も珍しくなくなってきました。

しかし、いざ企業が新規就農するとなると色々と課題が出てきてなかなか一筋縄では行きません。

(個人が新規就農する場合は法人ほど難しくはありませんが...)

これから法人が新規就農するにはどうしたらよいのかを出来るだけ分かりやすく解説していこうと思います。

ーー目次ーー

(1)農地所有適格法人とは

(2)農地所有適格法人の要件

(3)農地所有適格法人になるための手続き

(4)農地所有適格法人のメリット&デメリット

(5)農地所有適格法人の定期報告

(6)農業への新規参入で失敗するケース

(7)法人を設立しないで農業へ新規参入する方法

ーーーーーー

1.農地所有適格法人とは 農地を取得できる農業法人

  以下の3つだけが『農業適格法人』となることが可能{農地法第2条}

  ・農業経営を営む法人

  ・持株会社

  ・株式会社

  農地は許可が無ければ買うことも借りることもできないし、農地転用もできない

  農地を取得するには農業委員会に申請し、許可を得ることが必要となります。

  農地法で厳しく規制されており、自由に売買したり賃借したりできません。

  届出をしただけでもダメです。

  申請し、審査を受けて、許可を得なければなりません。

  また、農地転用(農地を住宅地、駐車場、資材置場などにすること)についても農地法上の許可が必要です。

  ◆注意◆

  農地法違反については「3年以上の懲役または300万円以下の罰金」という厳しい規定があります。

  さらに、法人が違法な農地転用を行った場合は、罰金が「億円」へと引き上げられています。

  十分にご注意してください!!

2.農地所有適格法人になるための4つの要件 法人が農地取得の許可を得るために必要な絶対条件

   〇農業に参入する場合の基本的な要件は個人と同様

   〇農地の所有は、農地所有適格法人の要件を満たせば可能(農地所有適格法人は農地を借りることも可能)

   〇賃借であれば、全国どこでも可能

【基本的な要件(個人と共通】

 1.農地のすべてを効率的に利用

  機械や労働力等を適切に利用するための営農計画を持っていること

 2.一定の面積を経営

  農地取得後の農地面積の合計が、原則50a(北海道は2ha)※以上で

  あることが必要

  ※この面積は、地域の実績に応じて、市町村の農業委員会が引き下げる

   ことが可能

 3.周辺の農地利用に支障がない

  水利調整に参加しない、無農薬栽培の取組が行われている地域で農薬を

  使用するなどの行為をしないこと

  ※個人の場合は、上記1~3に加えて、必要な農作業に常時従事することが必要

【農地を所有したい】

■農地所有適格法人(農地を所有できる法人)

1.法人形態  株式会社(公開会社でないもの)、農業組合法人、持分会社

2.事業内容  主たる事業が農業(農産物の加工・販売等の関連事業を含む){売上高の過半数}

3.議決権   農業関係者が総議決権の過半数を占めること

4.役員   ・役員の過半数が農業の常時従事する構成員であること

       ・役員または重要な使用人の1人以上が農作業に従事すること

       ※農地適格法人は農地を借りることも可能

【農地を借りたい】

■一般法人(賃借であれば、全国どこでも可能)

 ※賃借であれば、農地所有適格法人の要件を満たすことは不要

1.賃借契約に解除条件が付されていること

  解除条件の内容:農地を適切に利用しない場合に契約を解除すること

2.地域における適切な役割分担のもとに農業を行うこと

  役割分担の内容:集落で話し合いへの参加、農道や水路の維持活動への参画など

3.業務執行役員または重要な使用人が1人以上農業に常時従事すること

  農業の内容:農作業に限らず、マーケティング等経営や企画に関するものであっても可能

【農地所有適格法人の要件】

1.法人形態要件  株式会社(公開会社でないもの)、農業組合法人、合名会社、合資会社、合同会社

2.事業要件    主たる事業が農業(農産物の加工・販売等の関連事業※を含む。){売上高が過半数}

          {関連事業}

           ・農畜産物の製造・加工

           ・農畜産物の貯蔵、運搬、販売

           ・農作業に必要な資材の製造

           ・農村滞在型余暇活動に利用される施設の設置・運営等(例えば、農家民宿)

3.議決権要件

          {農業関係者}

           ・法人の行う農業に常時従事する個人

           ・農地の権利を提供した個人

           ・農地中間管理機構または農地利用集積円滑化団体を通じて法人に農地を貸し続けている個人

           ・基幹的な農作業を委託している個人

           ・地方公共団体、農地中間管理機構、農業協同組合、農業協同組合連合会

           ※総議決権の過半数

          {農業関係者以外}

           ・制限なし

           ※総議決権の2分の1未満

4.役員要件

       ①役員の過半数が、法人の行う農業に常時従事する構成員(原則年間150日以上)であること

       ②役員または重要な使用人の1人以上が、法人の行う農業に必要な農作業に従事(原則年間60日以上)すること

【まとめ】

企業が農地所有適格法人となり農業を始めるには、複数の大きな関門をクリアしなければらなないことがわかったかと思います。

農業は自然相手の仕事で必ずしも毎年コンスタントに収穫できるとは限りません。ましてや企業が参入するとなると一定以上の農地を確保して利益を出さなければ、すぐさま赤字なり経営そのものが成り立たなくなってしまいます。

まだまだ始まったばかりで多くの課題がありますが、将来的には個人も法人も新規就農のハードルがもっと下がってより農業が身近なものになってほしいものです。

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